歯列矯正の話し

痛すぎる歯列矯正!治療拒否した私に歯医者さんがとった対応とは?

歯列矯正

前歯の乳歯が抜けて、永久歯が生えてくる小学1年生の頃。

私は幼稚園児の時から歯みがきのチェックは母親にしてもらっていて、少しずつ生えてくる永久歯のチェックも欠かさずしてくれました。

乳歯の時は特に変わったところはありませんでしたが、永久歯が頭を出してくると「おや?」と、母親が異変を感じました。

真っすぐに生えてくるかと思われた前歯二本の永久歯が、どちらもガタガタと変な方向に生え出してきたのです。

前歯なので、口を開けると悪い歯並びがかなり目立ってしまいます。

歯列矯正は保険が適用されないため、かなり高額の治療費がかかります。

それでも私の将来のためだからと、両親は私に歯列矯正を受けさせることにしたのです。

今思えば大変ありがたいことなのですが、この歯列矯正が私の大変な生活の始まりになってしまいました。

腕はいいけど怖い歯医者さん

私は母親に連れられて、歯列矯正が上手だと有名な歯医者さんに連れられました。

その歯医者さんは腕はいいものの、かなり怖いと噂のある人で、実際に私の同級生でも通院をやめた人が何人かいました。

待合室は小さいながらも結構な人がいて、その長い待ち時間は、何をされるのか不安で仕方のない私の気持ちをより一層不安にさせました。

いよいよ名前を呼ばれて診察椅子に座ると、怖い面相の歯医者さんが私の前にやってきました。

何か私に話しかけるわけでもなく、無理やりグッと口を開け口内のチェックをする歯医者さん。

そのやり方はかなり強引だったし、歯医者さんは終始眉間にしわを寄せながらの対応。

「怖いなぁ……。」と、私はかなり嫌な気分になりました。

 

「子どもの歯列矯正はかなり長期的になりますよ。それでも大丈夫ですか?」

母親に質問をする歯医者さん。

「大丈夫です。よろしくお願いします。」

そう言う母親の言葉に、

(私は全然大丈夫じゃない!!)

と、自分の気持ちを聞いてくれないモヤモヤした憤りのようなものを感じました。

歯列矯正はとても痛い!

全ての歯が永久歯に生え変わるまでは、マウスピースによる歯列矯正が行われることになりました。

歯型を取ってぴったりのサイズに作られたマウスピース。

ご飯を食べる時以外ずっと口の中にこのマウスピースを入れているため、何かに集中しようとしてもその違和感に集中力がかき乱されてしまいます。

そして歯を強制的に動かしているため、じんわりとした痛みがずっと口の中にあります。

そのため、学校での授業中でもずっと意識は口の中。

学校からは、「授業に集中できていない。」と注意を受けたこともありました。

 

しかしこのマウスピースの違和感はまだまだ序の口でした。

永久歯が生えそろった小学五年生の頃。今度はワイヤーによる矯正に切り替わりました。

歯に接着剤のようなものでブラケットという矯正装置を取り付け、そこにワイヤーを通して歯を固定します。

だいたい二か月に一度くらいの頻度で、歯医者さんがワイヤーをきつく締めて調整し、徐々に歯を動かしながら歯並びを整えていくのです。

私の場合、上の歯が全体的に前に出ており、それを引っ込ませるためにフェイスボウとヘッドギアと呼ばれる装置を口のワイヤー装置とつなぎ、家にいる間はそれをずっと付けていなくてはいけませんでした。

これが想像以上に痛みを伴い、歯が抜けるんじゃないかと思ったことが何度もありました。

ワイヤーを動かして数日は痛みのせいで固いものも食べられず、柔らかいものしか食べられません。

その上、寝る時もヘッドギアを装着していなければならなかったため、痛みのほかに寝返りをうつのも難しく、日に日に寝不足になっていってしまいました。

普通の生活も億劫になる中、ワイヤーが邪魔で歯みがきが隅々までできていないことを歯医者さんに怒られることも増えていきました。

このような小さなストレスが積もっていき、私は母親に歯列矯正をやめたいと何度も訴えました。

その度に、「将来のためだから我慢して頑張ろうよ!」と言うだけ。

「お母さんたちは全然痛くないし好きなもの食べられるし、頑張れっていうだけでいいよね!!どれだけ辛いかわかってるの!?」

私は日頃の鬱憤を母親に毎日ぶつけて、家庭内はどんどん険悪になっていきました。

そして私の中でとどめの一撃になった出来事が、その歯列矯正の見た目による学校でのいじめでした。

当時私の年齢で歯列矯正をしている子は誰もおらず、“歯に奇妙な銀色の異物を付けた存在”である私は、いじめの格好のターゲットでした。

このときの私にとって歯列矯正は、痛みを伴いいじめの原因になってしまうだけで何のメリットもない最悪のものでした。

我慢の限界!

ワイヤー治療を始めて一年も経たないうちに、私は家でヘッドギアをつけるのも嫌でやめてしまいました。

すると歯の動き具合も止まってしまい、すぐに歯医者さんに付けていないことがバレてしまいます。

「なんで家でヘッドギア付けてないの?」

普段怒ったらめちゃくちゃ怖い歯医者さんは、低い声で私に質問しました。

私は、もうどうにでもなれ!!という気持ちで、歯医者さんに自分の気持ちをぶつけました。

「痛いだけでご飯も食べられないし、いじめられるからもうやりたくない!!」

それは医院中に響くぐらいの大声だったと思います。何人かの院内スタッフもこちらを見ていました。

「はぁ……。」

しばらく沈黙した後、私に怒鳴りつけてくるかと思っていた歯医者さんはため息をつき、「ちょっと待ってて。」と言い、待合室にいる私の母親を連れてきました。

「君の意思は分かりました。このまま続けても君のためにはならないだろうから、しばらく矯正はストップします。ただね、先生は君のお母さんと、君の歯を責任もってしっかり治すって約束したから、このまま終わりにはしません。君がまた矯正を受けてもいいと思うまで、先生は待ってるから。」

普段は怖い顔しかできないと思っていた歯医者さんの表情が、その時だけは真剣に私に分かってほしいという表情をしていました。

驚いた私は、「はい。」としか言えませんでした。

 

その後はワイヤー装置をすべて外し、またマウスピースのみの治療に戻りました。

いつでも矯正が再開できるよう口腔内のチェックは欠かさず行われ、歯医者さんが矯正を急かしてくるようなことは一切ありませんでした。

矯正再開

次に私がワイヤー矯正を始めたのは高校生になった頃。

周りの目が気になる年頃になり、私はまた歯列矯正を頑張りたいと思えるようになりました。

私が矯正をしていなかった数年の間にも、歯列矯正の技術はどんどん進歩しており、銀色で目立っていたブラケットではなく、透明で目立ちにくいものがその頃あたりから登場していました。

「これなら目立ちにくくていいでしょう?」

見た目でいじめられていたことを伝えたからか、歯医者さんはそのことを気にしてくれていました。

そして年齢も上がったことから、少量ではありますが痛み止めも一緒に処方してくれるようになり、寝れないほどの苦痛もかなり軽減されました。

歯並びの大切さも自覚する年頃。綺麗になるのなら耐えよう!と努力しました。

 

一度は投げ出しそうになった歯列矯正ですが、歯医者さんが根気強く待ってくれたおかげで歯列矯正も再開でき、現在は綺麗な歯並びを維持できています。

あのまま歯並びが悪い状態ならコンプレックスになっていただろうな、と考えると、高額な医療費を払ってくれた両親と、怖いけど真剣に治療してくれた歯医者さんには感謝してもしきれないくらいです。

kitsuneko22著